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街角のプリンス


今朝の雨は街を ジェルネイルで着飾って

あの人の面影を 煌めかせる

奥のカウンターには いつもの薄めのアメリカン

パッと見たら 駆け寄って 話を聞いてくれる


街角のプリンス どうか振り向いて

誰にも見せない 私だけの素顔を 見せて


恋しなきゃよかったと 思っても仕方ないね

会ってしまったら 戻れない 実らぬ恋としても


街角のプリンス どうか嘘を付いて

何気ない問いを 何気なく返す その笑顔が痛い


冬は通り過ぎて 帰り道の色を変え

あの人は春風が 何処か攫っていった


街角のプリンス 一歩踏み出さなきゃ

何も掴めない 冬を越せずに枯れた 花よ


知らない街角で もしも見かけたら

声をかけないで 予感させないで 去って

雨に 知らず 一粒 泣いた

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